kichijoji aqua illumination

PhotoⒸYohei Ogata

 

川島範久+佐藤桂火 / ARTENVARCH が空間デザインを担当した、吉祥寺駅北口駅前広場で展開するインスタレーション。バスロータリーの中洲全体を使ったインスタレーションとして、駅前イルミネーションをデザインした。

 

“吉祥寺の「包容力」を空間化する”

 

「空き地」である北口駅前バスロータリーの中洲そのものを空間として立ち上げ、吉祥寺の「包容力」の象徴として、一時的に人々の前に出現させることを考えた。

 

北口駅前バスロータリーの中洲は900㎡弱ある。その東側は通過動線・広場として日常的に利用されており、西側はフェンスで仕切られた空地となっている(緊急車両用スペースとして位置付けられている)。吉祥寺駅から電車やバスを利用する人々、吉祥寺で働く人たち、吉祥寺を拠点に活動するアーティスト、サンロード商店街や駅前商業施設で買い物をする人々、ハモニカ横丁で飲むひと、デートする高校生、特に何の用もないがボーッとする人たち、といった多種多様な人々で朝から夜遅くまで溢れている場所である。

 

このスペースの原型は昭和62年につくられ、以来この場所では地元商店会をはじめ各企業が一体となり年末から年始にかけてイルミネーションが行われるようになった。現在では、武蔵野イルミネーション「吉祥寺」は、冬の風物詩として注目され続けている。井の頭公園は3年後の2017年に100周年を迎える。そこで、駅前イルミネーションのリニューアルを皮切りに、サンロード、ハモニカ横丁、井の頭公園など街中へ展開していく3ヵ年計画が検討されており、本プロジェクトはその1年目のものである。

 

この場所を吉祥寺の「包容力」の象徴として出現させる仕掛けとして、単管パイプによる三角錐の集合でつくる高さ5.2mの立体トラス架構に三角形の半透明ファブリックを貼った白い巨大なウォールで全長約100mの外周を囲った。ウォールに囲まれた西側スペースの床は白い人工芝で仕上げ、先端中央には既存の街灯と一体化したピラミッドを配置した。昼は自然光、夜はLED照明とムービングライト、そして音楽によって染め上げることで空間として浮かび上がらせた。

 

吉祥寺は「包容力」のある街だと思う。一説によれば、西新宿の再開発で追い出された闇市の人々が吉祥寺に逃げてきたという歴史があるようだ。現在でも、ハモニカ横丁には昼間から酔っ払いがいることもあるが、吉祥寺はそんな人たちにも「いていいよ」と言ってくれる街なのだ。さらに、中沢新一の『アースダイバー』によれば、吉祥寺は縄文時代には海辺で、井の頭池は内陸に入り込んだ海の先端だった。「水辺」は古来より神聖な場所とされ人々が集まる場所であるが、吉祥寺は縄文時代より神聖で包容力のある場所だったのかもしれない。

 

寺社仏閣は、都市において、神聖で、かつ包容力のある場所の代表的な存在である。だが実は、吉祥寺には、寺としての「吉祥寺」はない。(かつては存在したが、1658年に現在の東京都文京区本駒込に移転したようだ。)であれば、今一度、この場所に「吉祥寺」をつくってしまおうと考えた。

 

しぶきを上げながら沸き出す「水源」のような空間。その敷地の中央に建つ神秘的なピラミッド。そのピラミッドには、吉祥寺を拠点として活動するアニメーション監督・森本晃司によって描かれた、幻の「吉祥寺」が毎時0分と30分にプロジェクションによって荘厳な音楽とともに出現する。さらに4本のムービングライトによる光の柱が空まで立ち上がる。フィジカルなモノとして出現するだけでなく、雲まで立ち上がる大きな存在として。

 

“Kichijoji Aqua Illumination 2015”
会場:吉祥寺駅北口前広場
会期:2015年11月3日(火・祝)
〜 2016 年1月11日(月・祝)
点灯時間 毎日 17:00 〜 24:00
プロデュース・テクニカルディレクション:LUFTZUG
ヴィジュアル:森本晃司
サウンドデザイン:畑中正人
空間デザイン:ARTENVARCH 川島範久・佐藤桂火
施工:脇プロセス
照明協力:株式会社DOTWORKS
協力:phy、カラーキネティクス・ジャパン株式会社、PRG株式会社、テレビマンユニオン、デイリープレス

official site : http://kichijoji-illumination.com/

 

PUBLICATION:

コンフォルト2016年8月号
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