SDG House in Kinuta


PhotoⒸJumpei Suzuki

 

SDGs 博士の家
住み手は環境政策を研究テーマに掲げている大学教員夫婦と子供二人の四人家族。SDGs を専門とする博士から、SDGs をコンセプトにした自邸「SDGハウス」をつくれないかという依頼を受け、このプロジェクトは始まった。
地球環境と人間社会を持続可能にするために、人間の心身の健康や快適性が向上されるような質が伴った室内環境や周辺環境、製造から廃棄までのライフサイクルを考慮した地球スケールでの省エネや創エネ、資源循環などに考慮しつつ、自分以外の他者と繋がる歓び(Delight)を感じながら、豊かな生活を創造していくことのできる器としての住宅をめざした。
敷地は東京都世田谷区の、川に向かって下る南垂れ斜面の上方の閑静な住宅街に位置しており、コンパクトな敷地で、狭あい道路に面し、高さ制限も厳しく、高い防火性能も求められるエリアだ。このような敷地において建物が環境に「フィットしている状態」、つまり、降り注ぐ太陽、吹く風、降る雨といった自然のエネルギーを上手に活用しながらも、周囲の住宅ともシェアするような計画とした。
構造は木造・在来軸組構法とし、メインの居住空間を、南に向かって緩やかに上る緩勾配屋根をもつ東西幅2間のボリュームにまとめ、西に向かって下る緩勾配の片流れの下屋ボリュームを付加する、といった構成とした。下屋ボリュームに耐震壁を配置することで、メインのボリュームを内部に構造壁のないフレキシブルで開放的な空間とするともに、眺望の確保と冬の日射を取り込む上で重要な南面の吹抜けと大開口を、構造上の十分な安全性を確保しつつ実現する計画とした。メインの屋根は部分的にめくれ上がり、この間には北向きのハイサイド窓が設けられる。これにより、北からの安定した昼光を取り込むと同時に、南から入った風を抜き、屋根に降った雨を雨水タンクに集め、南からの太陽光で発電することを可能にした。

断熱・気密については、断熱性に優れたフェノールフォームによる外張り断熱と充填断熱を組み合わせ、木製サッシや樹脂サッシ、外ブラインドを採用することで、高断熱高気密化を行った。また、空調・換気にガス温水床暖房、無給水加湿エアコン、ダクトレス熱交換換気を採用し省エネを図り、太陽光発電・家庭用燃料電池コージェネレーションシステム、電気自動車・雨水タンクの導入により、創エネ・蓄エネが可能なレジリエンス性の高い計画とした。
構造材やフローリングには三重県尾鷲市のFSC 認証木材を採用し、内壁は粘土や陶土をベースにした自然塗料で、健康に寄与するソイルペイントで仕上げた。家具には古木や廃材杉板を用い、リサイクルタイルなど資源循環に配慮した材料を選定した。

 


PhotoⒸJumpei Suzuki


PhotoⒸJumpei Suzuki


PhotoⒸJumpei Suzuki


PhotoⒸJumpei Suzuki


PhotoⒸJumpei Suzuki


PhotoⒸJumpei Suzuki


PhotoⒸJumpei Suzuki

 

 

基本データ ————————————————————————————————————————
建物名称/SDG House in Kinuta
主要用途/専用住宅
家族構成/夫婦+子供2人
所在地/東京都世田谷区
延床面積/133.32 m2(内、室内面積118.42㎡)
規模/地上2階
構造/木造軸組構造
最高高さ/6,990 mm

設計・監理
建築:川島範久建築設計事務所 担当/川島範久 大沼友佳理 國友拓郎 竹内翔平 石橋佑季
構造:平岩構造計画 担当/平岩良之 國江悠介
設備:高瀬幸造
照明 CHIPS 担当/永島 和弘
キッズルーム設計 慶応義塾大学小林博人研究室 担当/小林博人 海藤空
テキスタイルデザイン NUNO 担当/堤有希

施工
施工:ダブルボックス 担当/細川耀 大月勇輔
造作大工:矢崎組
木材生産・製材:速水林業、森林組合おわせ
プレカット工事:シー・エス・ランバー
建方工事:明翔建設
基礎工事:グラスガーデナー
断熱気密施工アドバイス:高橋建築 担当/高橋 慎吾
キッズルーム製作:真栄工芸株式会社 担当/高橋豊
造園:石井造園 担当/石井直樹 原竜一

工程
設計期間 2018年8月~2019年7月
工事期間 2019年7月~2020年4月

外皮性能/エネルギー/設備システム ————————————————————————————
外皮平均熱貫流率(UA値):0.32 W/㎡K(断熱ブラインドを除く)
冷房期平均日射熱取得率(ηA値):1.3 % (断熱ブラインドを除く)
相当隙間面積(C値):実測値 0.097 ㎠/㎡
設計1次エネルギー消費量:67.1 GJ/年 (太陽光発電の自家消費、コジェネレーションシステムによる削減を含み、断熱ブラインドの効果は見込まない試算)
発電量66.3 GJ/年 売電量34.4 GJ/年

空調
暖房方式/床暖房 エアコン
冷房方式/エアコン
換気方式/第1種換気(全熱交換式)
給排水
給水方式/直圧直結給水方式
排水方式/公共下水放流方式(生活排水, 雨水分流)
給湯
家庭用燃料電池コージェネレーションシステム(エネファーム/パナソニック)
発電
太陽光パネル(グランソーラヘテロ/カネカ) 約4.5kW
家庭用燃料電池コージェネレーションシステム(エネファーム/パナソニック) 最大700W

 

朝日新聞記事リンク ————————————————————————————————————

SDGハウス、始めます(1)
SDGハウス、始めます(2) 尾鷲訪問
SDGハウス、始めます(3) 建て方編:SDGハウスの『カタチ』
SDGハウス(4) SDGハウスの『外皮』:断熱気密について
SDGハウス(5) SDGハウスの『外皮』:窓でまもる